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ソーシャルレンディングに野口悠紀雄氏が指摘する可能性と問題点、その3~社会的意識が薄いことは事実だが……~


 週刊ダイヤモンドに掲載されている野口悠紀雄氏の連載、「超整理日記」にソーシャルレンディング(以下SL)が取り上げられたことに関する記事の3回目です。前回(2回目)では野口氏が指摘された第1の問題点「ソーシャルレンディングでは案件の中身がわからないこと」に関する考察をおこないました。今回は第2の問題点について考察を行いたいと思います。




第2の問題点、社会的意義が薄い(野口氏の指摘概要)

 野口氏は国内ソーシャルレンディング(以下SL)の2番目の問題点として、(「ソーシャル」という名前にふさわしい)社会的意義、社会を変えていこうという意識が、(特に投資家に)希薄であることを指摘します。たとえば(オールドエコノミーの)不動産中小企業の資金供給源とはなっているが、個人、ベンチャービジネス、スタートアップスが融資対象になっていないことを例として挙げています。

 またクラウドファンディング(以下CF)では映画製作などの社会運動的なプロジェクトを応援するという性格があったのに、SLは全くそうなっていない。投資家が融資先の投資内容を全く見ず、またその資金の社会的貢献を考えていない。単なる利回りが高い商品としてしか考えられてないということにも触れています。

”(海外では社会的運動の支援を目的として、能動的にプロジェクトを選択して投資家が資金供給を行っていること、日本のSL投資家に その意識が薄いことに触れ)海外のおけるソーシャルレンディング急成長の根底に、社会を変えようとする考えがあることを忘れてはならない。(-連載結びより-)


 連載の最終部分をそのまま引用しましたが、この部分に社会的意義の希薄さに対する野口氏の無念さを読み取るができます。野口氏の2番目の指摘につきましては(1番目の指摘とは異なり)、事実関係における反論は全くありません。そのとおりだと思います。

 ではその海外においては成功した「社会的意義」の導入は日本人の国民感情に合うのか、社会的意義を導入したSLの案件を導入したとしてそれは受け入れられるのか、そもそも現在の国内SLに社会的意義が無いのか、無いとしたらどのように持たせられるかを考察したいと思います。


考察1:日本においては社会的意義を持つCFの需要は高くないのでは?

 結論から述べると、海外のような「社会的意義」を持つSLやCFは日本では流行らないと思います。一般的なクラウドである日本人がお金を出すのはやはり(社会ではなく)自身へのリターンが第一目的であり、社会的貢献を目的に身銭を出す意識は薄いと思います。

 「寄付的な要素(人助けなどの社会的貢献のために投資元本毀損を投資家ある程度認めること)」、「リターンの不確実性(新規製品の開発であり、失敗した場合はリターンが得られない可能性があることを投資家がある程度認めること)」の要素を持つCF案件に一般の日本人はどれだけ受け入れられるのでしょうか?

 この2つの要素における投資元本毀損は投資家の意識的には、100%金儲けが目的である投資そのものが失敗しておこるものとは全く別のものです。投資プロジェクトの失敗ならば、自分の運が悪かった、目利きが悪かったと「自己責任」である程度は受け入れられますが、「社会貢献のため」というキレイ事のために最初から損をすることを覚悟してお金を出すのは(海外と違って)一般的な投資家は好みません。

 また同じお金を出すにしても新規開発プロジェクトにするよりは、既存の、あるいは新規商品でもある程度の評判が出揃ったものにしたほうが、遥かにリターンの確実性が約束されており、そちらに傾くのが人情です。

 日本人の意識的には社会的貢献にお金をだすのも、町の発明家にお金を出すのも、どっちも「物好き」の行為であると思います。寄付なんかにお金をだすよりは、徹底して自分のためにお金を使う、これが一般的な日本人の意識だと思います。

 具体的な例について述べるために非投資型CFにおける内外の温度差について触れたいと思います。なぜソーシャルレンディング(投資型CF)について述べているのに非投資型について述べるのかというと、まず国内SLが(野口氏が指摘する)社会的意義を有するようになったとして、それが国内投資家からの資金供給を呼び込めるかは、非投資型の現状から占えると考えるからです。

 海外、特に寄付文化が一般市民にも根ざした、米国においてクラウドファンディングは高い集金能力を持つようです。いわゆる購入型CFのKickstarterやIndiegogoが魅力的なプロジェクトで多額のお金を集めたというニュースはしばしば話題になります。一つのプロジェクトで数億円から数十億円を集めるものがあります。

 それに対して国内CFにおいてそのような話はあまり聞きません。たまに聞いてもアニメなどのいかにも「日本らしい」プロジェクトが多いようです(それでも数千万円規模です)。日本の購入型CFについて、「日本人にはそもそも合わないんだなぁ」と1番私が感じるのは、「日本人」がkickstarterで募集を行って、多額の資金を集めたというニュースを聞く時です。

 語学の壁があるのになぜわざわざ、海外で日本人が海外で募集を行うのか?寄付的要素を有するクラウドファンディングの需要が国内では低い。もっと端的に言えば「一般的なクラウドである」日本人には寄付文化が根付いていない、新しい商品の開発に資金を出す意識が無い、将来根付きもしない、結局購入型CFは実利を求める国民性に合わないためと考えられます。

 個人的な意見ですが、私は大災害発生時の被災者には寄付をしますが、普段は難病患者、貧困困窮者、国内問題に対して寄付をしたいと思いません。それは立法・行政の仕事だと思います。私は給与明細を見るたびに、なんて多額の税金・保険料(社会保障費)を取られているのだと嘆いています。

 困窮者を助ける社会的役割は納税により自分自身は十分果たしていると私は考えています。なぜこれ以上身銭を切って「社会的意義」とやらのために、自身の楽しみを削らなければいけないのでしょうか?ボランティアをして余暇を捧げなければいけないのでしょうか?フルタイム勤務者であり、自分の楽しみに使える時間はただでさえ少いのに?

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 社会保障費は老人、しかも終末医療に多額の金を使い無駄が多いように感じます。生活保護はギャンブルという無駄遣いを容認するほど大盤振る舞いをしているのだから、まずそこを立法・行政が改善して上記困窮者を助けるほうが先決で有効だと思います。これが日本の大半を占める、CFにお金をだす余裕がある、クラウド(大衆)の心情ではないでしょうか。NHKのニュースでは慈善活動を行なう「キレイな人」が多く取り上げられますが、それは一握りの人です。

 実際の大衆は日常生活では寄付とも慈善活動とも無縁であり、無関心です。そもそもそのようなニュースを見たからって自分も「キレイな人」になりたがる人はどのくらいいるのでしょうか?国内非投資型クラウドファンディングの低調はそのことを表しているのではないでしょうか。

 かつて私はクラウドファンディング自体がそうした日本人の意識を変えるのではないかと期待しましたが、その望みは薄そうです。書店にはふるさと納税でお得をしたい人のための書籍がたくさん並んでいます。同制度により2015年において宮崎県都城市が約35億3千万円、静岡県焼津市が約34億9千万円を「寄付」してもらったと聞くと、やはり日本人は実利的であり、それで良いのだと思います。微笑ましい国民性であると思います。

 ちなみに昨日(2016/05/17)放送のWBSで大江キャスターが述べていらっしゃいましたが2015年度のふるさと納税の「寄付額」は昨年度の3倍以上の1300~1400億円になる見込みとのことです。

20160517_232235.jpeg
 
 私の集計ですがSLの2015年度の募集額は約276億円です。ふるさと納税と5倍ほどの差をつけられていることになります。非投資型CFはすべてのサービスの合計でだいたい2億円を集めているようなので1年では24億円ほどでしょうか?60倍ほどの差となりますね。この客観的な数字が日本人の意識をよく表しているといえるでしょう。

 購入型CFで資金を集めようという「事業者を対象とした」本が何冊か発売されましたが、今日書店でその姿を見ることはほとんどできません。絶望的なことに一般市民(クラウド)を対象とした「購入型CFを利用してお金を出して応援しよう!」などという本は一冊も発売されていません。前述のとおり、一般市民(クラウド)を対象とした「地方自治体にお金をだして応援しよう!(そしてお礼をもらおう、減税もしてもらおう!)」という本はたくさんあるのに!これが実態なのです。

 でも私はそれで良いと思います。私は欧米のふざけた格差・差別社会を軽蔑・嫌悪しています。偽善の塊だと思っています。だから寄付文化が根付いていると聞いても、それを羨ましくとも、尊敬すべきこととも考えていません。まして社会を変えていこうという動きがCFにより実践されつつある、素晴らしい社会とも欧米を思っていません。

 欧米は寄付文化が根付いていようと、CFが活況だろうがそれが問題解決に繋がっているように見えません。格差は開く一方です。一部のエリートのみが一般的な日本人よりはるかに良い思いをいしています。その一方で底辺は日本のその階層の人々よりも遥かに酷い生活を強いられています。

 バフェット税も否決されました。人種・宗教闘争も改善の動きが見られません。日本は寄付文化が根付いてなかろうと、社会的意義をもつCFが流行らなかろうと、欧米よりは遥かにましです。それでいいと思います。


考察1の結論

 国内ソーシャルレンディングに社会的意義が希薄であることは事実である。しかしそれを持たせたとして、それが日本の大衆(クラウド)に受け入れられるかは、非投資型CFの現状を見る限り非常に疑問である。


2016/5/18夜 追記
言葉足らずだったのでちょっと補足を。国内SLの社会的意義が希薄というのは投資家意識においてという意味です。じゃあ客観的に本当に国内SLの社会的意義そのものが希薄であるかはこれから論じたいと思いま
す。

今回はここまでにさせてください。

次回記事
2016/05/20 野口悠紀雄氏が指摘するソーシャルレンディングの可能性と問題点、その4~CFは国民感情の鏡~

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コメント
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おっしゃるとおりです

あっちゃん
いろいろ情報ありがとうございます。
ソーシャルファンディングは投資先に匿名性があるため、
単なるお金を増やす手段でしかありません。ただ社長に
実際あってしゃべったら、この人を応援するもしくは自分の
人生をかけてもいいと思ったりします。社長に気軽に会えるのも
ソーシャルファンディングのよさですね。ですから私は社長と話して
投資すべき会社を選別してます。今いろいろ増えてますが、それらには
投資する気にはなりません。よく分散投資でソシャルレンディング各社に
分散したらよいと言われますが、それは間違いだと思います。
たとえばUFJ,みずほ、三井住友3社に分散ならわかりますが、零細貸金業者に
分散すると地雷を踏む確率は確実に上がります。それよりも絞った会社で
投資する方が複利効果もありますし良いと思います。ただこの方法は
未来永劫でなく時限投資であるということは述べておきます。
何時止めれるかは一番の問題ですね。
ただ、maneoも保証付きを出してきたので金利は下がりますが、
そうした案件は社債と同じだと思います。ただ本当に保証されているのかが
わからないのが問題ですが。

2016-05-18 20:31 │ from あっちゃんURL Edit

信念を持って投資できるのは良いことですね

あっちゃんさん。
コメントどうもありがとうございます。

お返事が遅れてすみません。

そのようにおっしゃっていただけると本当に励みになります。
これからもご愛読ください。

実は私はソーシャルレンディングに投資しはじめのころは
セミナーに参加せず、HPの情報だけで投げやりに投資をしていました。

当ブログが少しは耳目を集めるようになってから、コンテンツづくりのために
セミナーに参加するなど多少アクティブな活動をとるようになりましたが
それにより、私もあっちゃんさんのようにこの運営会社ならば投資をしたい!
という意識を多少は持つようになれたかと思います。

実はわたしはソーシャルレンディングでどのように投資している?とか
どのように投資したらよいと思う?と聞かれたら以下のように答えるようにしています。

「少額で分散投資できるのであちこちに投資して、サービスやリターン、
案件を実際に体験して吟味し、自身が良い所をみつければ良い」

だからあっちゃんさんと意見を異にするわけですが
そのことで私たちがいがみ合う必要な全くないと思いますし
これからコメントをいただければ幸いです。

インベスターZとうい漫画がありますが、その本には
分散投資は意味がないという趣旨のことが書いてあったと記憶しています。
確か投資先の成長性を信じられるならば、信念をもってそこに集中投資するべきという
意味だったと記憶しています。

最近お会いした個人投資家(専業です)の方も、
高い収益を上げるためには、分散投資は適当でないという
趣旨のことをおっしゃっていました。

いずれも私などは足元にも及ばない、投資経験からくる発言であり
それで良いのだと思います。

今後共よろしくお願いします。

2016-05-20 09:58 │ from ファイアフェレットURL Edit

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