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    野口悠紀雄氏が指摘するソーシャルレンディングの可能性と問題点、その7~本質的な投資であるSLが社会を変える~

     週刊ダイヤモンドに掲載されている野口悠紀雄氏の連載、「超整理日記」にソーシャルレンディング(以下SL)が取り上げられたことに関する記事の7回目です。前回(6回目)において、SLで案件の内容について今以上に情報公開が行えるように規制が緩和されれば、今以上にお金がSLに流れ込み、社会の活性化に繋がるのではないか?という話をしてみました。

     今回は私論ですが、SLに個人投資家が資金を投じる効果は、他の投資商品である株、投資信託、CFD(差額決済取引、FXもその一種)、先物・現物取引等に比べて、社会に与える影響が大きく、これこそまさに日本社会を活性化させる鍵である!ということを述べたいと思います。




    本質的な投資により社会が活性化する

     現状の覆面化の状態でもSLにはどんどん流れこみつつあります。この覆面化という制約が外れれば、この動きはさらに大きくなることが期待できます。一般的なクラウドが融資という形で事業への投資ができるようになります。

     ここで「投資」という言葉の意味をもう一度考えて見たいと思います。

     私たちは株式や投資信託にお金を出すことを「投資である」と教わります。CFD、先物・現物取引等もそうです。

    しかしこれは本当の事でしょうか?

     例えばあなたがトヨタの株を100万円分買ったとして、その100万円は自動車の製造に使われるのでしょうか?

     上場株式の売買の仕組みを知っていればこの答えは明確にNoであることがわかります。今日も世界中で莫大なお金が動き、上場、非上場を問わず株式が売買されていると思いますが、そこに投じられるお金がその企業の運営資金になる割合は、全体の株式売買の割合ではほんの僅かです。会社立ち上げの時の株式発行、増資、IPOくらいでしょうか?

     これは本当に「投資」といえるのでしょうか?単に人から人へお金の受け渡しが行われているだけです。誰かが利益を得たとしてそれは投資資金が事業に活かされ、財が産み出されたためではありません。

    投資した株式の価格変動と決済が起きただけです。この状態で利益が生じたということは、つまるところ誰かが「損をした」という可能性も包括しているわけです。

     FX、CFD、先物・現物取引ではその性格が更に強くなります。私もインベスターZの愛読者ですから、上記の経済活動が全くの無意味でないことはわかります。しかしやはりその投資金額が、事業の運営に使われない傾向が大きい投資は「虚業」だと私は思います。

     REITなど事業投資の収益をリターンに充てる投資商品があることも承知していますが、価格変動があり、キャピタルゲイン狙いの動きがある以上、投資資金がどの程度事業資金に使われているかは疑問が残ります。

     上記の考え方に基づけば公債・社債は何らかの事業資金に使われる割合は高いでしょうから、まだ資金が有効活用されているといえます。

     ただし公債は赤字の補填ですし、その用途はお金を生み出す性格が弱いものです。社債はお金を生み出す企業活動に使われますが、SLほど投資家目線の商品ではありません(後述)。そもそも社債はその発行を企業が行なうにも、それを金融商品として投資家に販売するのにも現在でも様々な規制があり、中小企業、ベンチャーの資金調達手段として使い勝手の良いものではありません。

     国内SLが他の投資商品に絶対的に勝る利点は投資家の投資資金が現状100%事業資金に充てられることです。そしてその事業が生み出した収益から運営会社の収益と投資家へのリターンが生み出されます。資金の奪い合いではなく!

     その資金供給方法が「投資」というよりは、擬似的ではありますが「融資」であることも投資家にとって魅力です。
     
     「融資」であれば、事業がうまくいかなくとも元本とリターンの保証は大きくなります。このことは事業者にとって銀行融資、株式・社債発行よりも金銭負担の面ではでは不利であることは歪めませんが、その一方で元本利息払いさえしていれば経営に口を挟まれにくいです。また融資ですから社債発行よりは手軽な資金調達手段でもあります(SL運営会社が審査して、その結果がOKならば事業資金が得られます)。

     SL運営会社がベンチャー企業であること、ネットから産まれた産業でありITとの親和性が高く、現在の銀行のような高コスト体質、旧弊からの柵(しがらみ)からも無縁であることも注目してよいでしょう。

     SL運営会社は駅前の一等地に店舗を構える必要も、窓口事務員を雇う必要も、役員が社用車を持つなどの見栄を張る必要もありません。ですから投資家へのリターンを「高リスクの企業へ貸出を行っているのだ」という説明以上に高くすることができます。。

     これまたベンチャー企業が新たに創りだした投資商品だからこその特徴ですが、国内SLは投資家本位の商品設計を行ってきた、(短いながらも)歴史があります。各種手数料無料、貸金業法(事業者の返済義務、担保設定)による元本とリターンの保証など徹底した投資家目線の商品が作られています。私が知る限り、各サービス会社は投資した資金における「販売手数料」「信託報酬」を取りません。利息というリターンが得られた場合だけ手数料を得る仕組みとなっています。

     金融商品としての規制はありますが、現状ならばSL運営会社が第二種金融商品取引業と貸金業の登録を行っていれば資金を投資家から募ることができます(社債を扱うには第一種金融商品取引業の登録が必要)。上記の登録を持たなくとも、運営が可能である場合もあることは以前述べたとおりです。

    参考
    2016/03/09 価格ドットコムさんにご指摘申し上げます

    信用第一の証券会社が運営するソーシャルレンディング。募集額80億円の実績あり



    高利率案件ならば、ノンバンクの老舗が運用するトラストレンディングにどうぞ




    整理しますと
    1.投資資金が100%事業資金として用いられ、リターンはそこから生み出させる
    2.「投資」ではなく「融資」であるため元本保証性が高い
    3.投資家本位の商品設計が行われてきており、既存投資商品に比べ投資家が有利
    4.現状の規制では難点が多い、新たなベンチャーなどの資金供給源となりえる


    となります。
     
     メリットだけを挙げましたが、4については、監督行政からの融資先企業の「覆面化」、「複数可」指導という非常に困難な規制がいまだあるのはこれまで述べてきたとおりです。金融庁が現状SLにおいて、覆面化、複数化という規制を課すのは、融資という強い力を、クラウド(一般大衆)が擬似的とはいえ持つことに対して慎重なのだということは理解できます。

     しかし現状の二種金融商品取引業と貸金業登録という、いま時点で十分厳しい規制を課された状態であるならば、この覆面化、複数可という規制を将来的には緩和しても良いのではとも思うのです。昔と違ってITが発達し、人はより多くの情報を有効活用できるようになったのですから、規制を行う意味は薄れてきているのではと感じるのです。

     繰り返しになりますが現状の投資市場の大半が単なる鉄火場であること、つまり行われている経済活動が単なるお金の奪い合いであり、投資の名に相応しいものであるか私は疑問に思っています。
     株式売買では24時間対応できる大手の取引システム、投資情報の不均衡、その他もろもろで個人投資家はとても不利なように思えます。事業が懸命の努力の結果失敗して損失を被るならばともかく、その損失は単に他人に奪われただけなのです。

     こうした投資活動が全く無意味とか、無くせとか主張するつもりまではありません。しかし情報技術の発展で産まれたSLを、より有効に社会に活力を与える新しい投資として、世間一般、ひいては監督行政には認識いただき、規制緩和に道筋をつけて欲しいと考えています。

    今回はここまでにさせてください。

    次回記事
    野口悠紀雄氏が指摘するソーシャルレンディングの可能性と問題点、その8~本質的な投資に目を向ける時代では?~

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